サッカーにおける反復スプリントトレーニングの最適化

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サッカーにおける反復スプリントトレーニングの最適化

2020/07/21

 

齋藤朋弥・長谷川裕
 
・サッカーの試合中、スプリントは何十回と行われる
前回はサッカーにおけるスプリントについてお伝えしましたが、今回は反復スプリント能力についてお伝えします。スプリントとは、ほぼ時速24㎞以上に到達したスプリントのことを言うということを前回説明しましたが、サッカーの試合中に行われるスプリントは、休息を挟んで数十回繰り返されます。
Jリーグの試合では、多い選手で30回以上のスプリントを1試合中に行っていることが確認できます。そのため、単純にスプリントスピードが速いだけでなく、そのスプリントを試合中に何度も反復できる必要があると言えますこうしたスプリントを何回も繰り返す能力は反復スプリント能力:Repeated Sprint Ability (RSA)と呼ばれています。 
 
・反復スプリント能力とは
最大速度のスプリントを高い頻度で再現できる能力としてのRSAを評価する方法としては、反復スプリントテストがあります。反復スプリントテストは任意の距離で最大努力でのスプリントを行い、休息を挟んで複数回繰り返し行い、その低下率によって評価する方法です。サッカーでは20~30mほどの距離でよく行われています。反復スプリントテストについて詳しくは以下のURLからご確認ください。別ブログ参照
 
RSAを向上させるためにスプリントインターバルトレーニング:SITを行う
ほぼ最大速度のスプリントを高い頻度で再現する能力としてのRSAを向上させるためには、トレーニングにおいても自分が出せる最大スピードで行う必要があります。そのためにはスプリントインターバルトレーニング(Sprint Interval Training:SIT)が最適です。一般的なインタバルトレーニングや高強度インターバルトレーニング(HIIT)と違う点は、最大限のスプリントを繰り返す点です。通常インターバルトレーニングはVo2MAXのスピードに対して、90~105%ほどの強度で行われるのに対し、SITは選手が実行できる最大限のスプリントを繰り返します。これにより最大限のスプリント動作を継続する能力にアプローチできます。
 
・大勢の選手へのSITは音声スピーカーを使用すると効果的
大勢の選手でトレーニングする場合は専用の音声スピーカーを使用し、選手ごとに決められた距離を設定した秒数内で走り切る形式のSITが有効です。例えば3秒間で完了するスプリントを繰り返す場合、あらかじめ測定しておいたスプリントタイムを基に 、3秒間で走り切れる距離を選手ごとに設定します。
例えば20mを3秒で走れるA選手は20m÷3秒×3秒=20mに距離を設定してインターバルを行います。20mのスプリントタイムが1.8秒のB選手は20m÷1.8秒×3秒=21.4mに距離を設定します。この設定を各選手ごとに行うことで、大人数でも同じ3秒という時間で一斉にSITを行うことができます。この距離は選手ごとの最大スプリントタイムに合わせて設定するため、少しでも気を抜くと既定の距離を走り抜けることができなくなります。そのため、時間管理はコーチが腕時計を見て笛で指示するのではなく、MookyBeeperのような音源スピーカーを活用し自動的に指示し、コーチは、選手が決められた距離に到達しているかどうかや、フライングをしていないかどうかといった状況を確認することに注意を置きます。選手に指示を出し、鼓舞することで選手の高いモチベーションを引き出し、高いトレーニング効果を得られます。
 
・スプリントインターバルトレーニング具体例
下の表はある高等学校のサッカー部で実際に使用しているものです。まず20mスプリントテストを行い、選手のタイムを正確に把握し、それを基に3秒間で到達可能な距離を計算したものです。20mが 2.85~2.92秒だった選手は21mに距離を設定し、 3.25~3.42秒だった選手は18mと短くします。
 
・距離設定例
20m(秒) タイム 走距離
2.85~2.92 21m
2.93~3.07 20m
3.08~3.24 19m
3.25~3.42 18m
3.43~3.50 17m
 
・選手の能力に合わせて距離を設定する
 
 
 
このスプリントを休息時間10~20秒挟み、10~20本1セットとして行い、複数セット繰り返します。
 
・RSAを高め、パフォーマンスを向上させる
サッカーにおいて試合中、いついかなる時もチャンスを逃さないために最大限のパフォーマンスを常に発揮することは必須であり、特にスプリント動作は試合結果を大きく左右する一つの重要な要素となります。速いスプリント動作を繰り返す能力であるRSAを高めることで、試合を通して高いパフォーマンスを発揮し続けることに繋がります。その能力を向上させるためには、ただ走るだけはなく、常に最大限のスプリントを繰り返すトレーニングが必要となります。そのためにスプリントインターバルトレーニングが有効で、効率よくチーム全体で最大限のトレーニングを行うことができます。スプリントだけではなく、スプリントインターバルトレーニングなどスプリントを維持するためのトレーニングを是非取り入れてみてください。
 

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https://sport-science.jp/blog/detail/20201224152536/

 

齋藤朋弥 t.saito@sandcplanning.com
エスアンドシー株式会社 営業・企画
JATI-ATI、スポーツパフォーマンス分析スペシャリスト、NSCA-CSCS
龍谷大学スキー部トレーニングコーチ

 

長谷川裕
龍谷大学スポーツサイエンスコース教授
スポーツパフォーマンス分析協会会長
日本トレーニング指導者協会名誉会長
エスアンドシー株式会社代表

 

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