長距離ランナーの分析 Part3:効率よく走るための「バネ」
2021/06/04
ランニング効率を高める「バネ」
前回はランニングスピード向上には「ステップ長(歩幅)」を長くし、「ピッチ(回転)」を高めるということをお伝えしました。
そのためには短い接地時間と長いステップ長を両立することが重要ですが、言いかえれば接地時間を長くすることなく、今まで以上の力を発揮する、ということが必要となります。
これが爆発的筋力や「バネ力」と言われているものの正体です。じわっと時間をかけて大きな力を振り絞るのではなく、パンッと瞬間的な地面に対する足の接地で大きな力を加え、その跳ね返り反動で大きな力を得るということです。
いわゆるバネのある走りというのは、決してストライド走法のように歩幅が大きい走り方だけにあてはまるのではなく、短い接地時間でどれだけ力を加えられるか、言いかえれば、短い接地時間でいかにより長いステップ長を確保するための滞空時間が得られるかということです。
この「バネ力」というのは筋肉の発揮する筋力だけではなく、腱のもつ弾性というバネのような特徴も重要で、バネが優れていれば、エネルギーの消費も少なくて済みます。
いわゆるランニングエコノミーに優れた人は優れたバネを持っています。
このバネ力もランニング計測と同じ測定機器で計測することができます。
測定方法は連続ジャンプです。
腕の振りのうまい下手による差をなくすため、両手を腰に当て、その場で連続6~10回ジャンプを行います。
その時、空気のいっぱい詰まったボールを手で着いて弾ませるように、できるだけ「接地時間は短くなるように、かつ滞空時間は長くなるように」跳ぶことが重要です。これをリバウンドジャンプといいます。
このテストで「滞空時間÷接地時間」で得られるバネ指数というものを計算して出します。
これは、過去の大規模都市型マラソンのエキスポで約500名の方のバネ指数とその方々のベスト記録のデータを基にその関係を見たグラフです。
フルマラソンのベスト記録が6時間から5時間くらいまではバネ指数は記録とはあまり関係がないようですが、そこから記録が良くなるにつれてバネ指数との関係が強くなり、速いランナーほど大きなバネ指数を持っているということが分かります。
これは10kmの記録でも全く同じ傾向が見られます。フルマラソンでのサブスリーや10㎞走での40分切りには呼吸循環器系の持久力だけではなく、こうした足周りのバネという、筋力にかかわる要因が必要となってくると言えます。
高いバネ力を持っている場合、それだけ速くそして同じスピードなら楽に走れる潜在的な能力を持っていることになります。
次回はこのバネを活かした着地方法についてご紹介致します。
Part1:ランニングスピードを構成する「ステップ長とピッチ」