長距離ランナーの分析 Part2

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長距離ランナーの分析 Part2:ステップ長とピッチの分析

2021/05/31

前回はランニングスピードの要因である「ピッチ」と「ステップ長(歩幅、ストライド)について説明しました。今回はそのピッチとステップ長について、さらにランニングのスピードアップに必要な情報をより詳しく見ていきましょう。

 

ピッチとステップ長でランニングスピードが決まることは前回ご紹介しましたが、ではピッチとステップ長を知るためにはというと、測定することが必須になります。ピッチとステップ長の測定には、計測機器が必要となります。カメラ映像分析でもできなくはないのですが、莫大な時間が必要となります。

 

上画像の測定機器「OptoJumpNext」は地上3㎜の高さに、1㎝間隔で光学センサーが配列されています。

トレッドミル上に設置して一定のペースで走る中でのピッチとステップ長がリアルタイムでわかります。

連結して実際のトラックでのランニング中のデータを取得することも可能です。

S&C のホームページでダウンロードできるランニング分析シートを使用すると、5段階でピッチ走法か、ステップ長走法か、平均的走法かがすぐに分かります。さらに、スピードアップのためにどれくらいステップ長やピッチを上げれば良いかということもひと目でわかります。

逆に言うと、「計測しなければステップ長もピッチもコントロールしようがない」ということになります。

 

ランニング分析シートのフルマラソンの例です。

例えば完走タイムが4時間だとすると、そのスピードで走る人のうちステップ長が大きい人で114cmとなり、短い人は90㎝くらいです。

まずそれを5段階評価で示します。平均的で178~168cmです。ピッチは速い人で1分間に190歩、少ない人で156歩以下となります。

ピッチとステップ長は両立しませんので、どちらかが大きいとどちらかが小さくなり、ピッチ走法かストライド走法かに分かれます。

 

そしてここからが大事なのですが、もし今の走り方できついと感じていて、極端にステップ長が大きいタイプだということが分かった場合、「少しステップ長を狭くし、その分ピッチを上げる」ことで楽になるかもしれません。

 

逆もあり得ます。極端なピッチ走法だということが分かった場合ピッチを少し抑えて、ステップ長をわずかに伸ばせば、それも楽に走れる可能性があります。

また、今以上に速く走りたいと考えているならば、今のピッチを維持したままステップ長を伸ばすか、今のステップ長でさらにピッチを上げて行く必要があります。

 

その場合、極端なステップ長走法の人はすでに平均値以上のステップ長で走っているわけですからさらにステップ長を伸ばすことは難しいと考えられます。つまりピッチを上げる走りを身につける方向でトレーニングするのが賢明だということです。

逆に、すでに大きなピッチで走っている人がさらに速く走りたいという場合、もっとピッチを上げるというのは難しいわけですから、ステップ長を伸ばす走りを追求していくのが良いということになります。

自分の型を知ることで、スピードアップのための戦略が変わります。

では、ステップ長とピッチをどのようにすれば今以上のスピードを出せるようになるか?

どうしたら今よりも楽に走るためのステップ長やピッチをコントロールできるのかというお話に移ります。

結論から先に言うと、上記の五つの方法でしかスピードは上がりません。

ではその中身を詳しく見ていきましょう。

すでにお伝えしたように、ランニングスピードはステップ長×ピッチで決まります。

そしてピッチとは接地時間+滞空時間です。

問題は、ステップ長を広くするためには、「地面に対してより大きな力を加える必要があり、より強く地面を蹴る」ということです。単に「大股に足を着く」ということではありません。

地面を強く蹴れば蹴るほど大きなステップ長が得られます。しかしそれによって地面に対して力を加えている時間がどうしても長くなり、接地時間が長くなってしまいます。

 

またステップ長がのびるということはそれだけ滞空時間も長くなります。つまり、ステップ長とピッチは簡単には両立しません。 

ステップ長を伸ばすための接地時間と滞空時間は、ピッチを減らしてしまうのです。

 

それとは逆に、ピッチを上げるために接地時間と滞空時間を短縮してしまうと、今度は地面にしっかりと力を加えることができず、滞空時間も短くなってステップ長を伸ばすことができなくなります。

 

そこで、1つの解決策として、今までどおりのピッチでステップ長を伸ばそう、ということになります。ステップ長を伸ばそうとすると、ピョンピョン跳びはねなくてもどうしても滞空時間は長くなります。ではどうすればいいでしょうか?

 

接地時間を短くすればいいのです。

しかし、その短くした接地時間で今まで以上の力を発揮しなければなりません。

 

もう一つの方向として、今のままのステップ長でピッチを上げるということです。そのためには無駄な滞空時間を減らすとともに、より短い接地時間で今と同じだけの力を地面に加えなければなりません。

接地時間が短くなった分、地面に力を加えられなくなってステップ長が縮んだのでは意味がありません。

 

次回は接地時間の短縮とステップ長の延長のために必要な「バネ」と、そのバネを活かした着地方法についてご紹介致します。

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