ゴルファーのVBTデバイス使用例:VBT for Golfer

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ゴルファーのVBTデバイス使用例:VBT for Golfer

2023/06/30

著者:ニック・ランドール S&Cコーチ

 

翻訳:長谷川 裕・長谷川 昭彦

 

私(ニック・ランドール)はキャメロン・スミス選手と10年以上一緒に仕事をしていますが、対面でトレーニングをする期間も充分あった一方で、エリートゴルフの年間を通じた国際トーナメントのスケジュールによって、克服しなければいけない壁もありました。

選手と直接会う時間に一貫性がなく、大会スケジュールも大きく変動します。移動による疲労などにより、プログラミング、モニタリング、テスト、モチベーションなどのS&Cコーチの日常的な活動を行うことも決して容易ではありません。しかし、幸いなことに、現代は使いやすいテクノロジーがあり、いつでもコミュニケーションが取れる時代であり、VBTデバイスやアプリなどのツールがアスリートとのリモート作業のための効果的なソリューションを提供してくれていますので、私は大いに活用しています。

キャメロン・スミス:プロゴルファー
年齢:27歳 世界ランキング:28位 身長:177㎝ 体重: 75㎏
デッドリフト1RM: 175kg
バックスクワット1RM: 135kg
ベンチプレス1RM: 90kg
プルアップ1RM: 105kg

以下に、アスリートと直接会って話をすることができない環境でもVBTデバイスとアプリを活用してストレングス&コンディショニングの専門的なアプローチを促進する方法をいくつか紹介します。

 

COUNTERMOVEMENT JUMP(CMJ)を使用した準備状況の評価

 

ゴルフは歩くペースで行われ、ショットの間に十分な回復時間があるため、競技自体がS&Cトレーニングの妨げにはなりにくく、トレーニングが競技の妨げにもなりにくいと考えられています。しかし、トーナメントのラウンドは5時間以上に及ぶことが多く、また、準備やスキルトレーニングには高い集中力が必要とされるため、実際には精神的・肉体的な疲労の蓄積は相当なものです。私は、PUSHのテストの一つである「CMJ-腕振り有り」をはじめとする様々な方法で、トーナメントゴルフが疲労に与える影響を観察してきました。ゴルフトレーニングがキャメロンのトレーニングへの準備に与える影響を3週間にわたるCMJパフォーマンスから見ると以下のようになります。

第1週 トーナメントがあった週の後のオフ期間で、週が進むにつれてCMJの高さが上がり、前週のトーナメントから回復していることが見て取れます。トレーニングの負荷は、より強度の高いジムワークを行う機会が与えられたため、適宜調整されました。

第2週 国内トーナメント中で、トーナメントでのゴルフによる精神的・肉体的な疲労が、パワー出力を抑制するため、その結果がジャンプ高の減少に現れていました。トーナメント期間中のトレーニング負荷は常に大幅に軽減され、CMJのテスト結果もそれを裏付けるものでした。

第3週 国際トーナメントが開催されましたが、通常のトーナメント効果と海外渡航の疲労を考慮すると、準備性は低いままのようです。

▲VBTデバイスのポータルシステムに表示されたCMJの高さの週ごとの変化

 

やる気を高めるために

ゴルフでは微細な技術的側面があるため、多くの選手は「スイングの感覚」に非常に敏感であり、トレーニングによってそれが損なわれることを避けたいと考えています。そのため、ウエイトトレーニングは通常、高温多湿の気候の中で長時間の技術練習を行った後、一日の終わりに行われます。キャメロン自身もトレーニングがあまり好みではないという事実と相まって、モチベーションが不足することがよくあるので、「挙上速度」のような客観的な指標は本当に役立ちます。私はトレーニング指導で挙上速度の目標値を提示する際、トレーニングの焦点を絞ってモチベーションと集中力を高めるために、0.1m/s以内の厳しい目標速度範囲を設定するのが好きです。下の図は、スプリットスクワットを4セット行い、平均速度目標を0.4~0.5m/sに設定したものです。

この狭い目標速度範囲は、キャメロンが4セットすべてで本気の全力挙上を行わなければ達成できません。

▲ポータルシステムに表示されたバーベル・スプリット・スクワットの全レップの挙上速度

※薄い緑の帯が目標挙上速度の範囲

 

日々の強度のキャリブレーション

トレーニングを行うことにより、技術練習やアスリートからのフィードバックだけでは困難な練習強度の調整が可能となります。トレーニングで狭い目標速度を設定することで、キャメロンは実施したセットのパフォーマンスに応じて使用する重量を自分で選択することができます。

下図は、リモートトレーニングセッションの実例です。目標速度を0.4~0.5m/sに設定してバックスクワットを4セット行っています。

3セット目に選択した重量が目標速度に対して重すぎることに気づき、(セットのほとんどのレップが目標ゾーンに届いていないため)4セット目には軽い負荷に戻しました。

※このように目標挙上速度をベースに重量を調整することがVBTの基本です。

 

リモートでもトレーニングの質を維持するために

 

キャメロンはフロリダに住んでいて、私はオーストラリアのサンシャインコーストを拠点にしています。COVID19で渡航制限を課される前から、キャメロンはトレーニングセッションの大半を指導者なしで行っていました。しかしPUSHを使用すると、部屋にコーチがいるようなもので、サウンドフィードバック機能により、挙上速度に関する達成や警告などのリアルタイムフィードバックが得られます。また、PUSHポータルでは、すべてのレップが追跡され、記録され、分析されることをキャメロン自身が理解しているため、決して1レップも手を抜かない強い責任感をもってトレーニングに取り組むことに繋がります。

また、時にはアシスタントが撮影したビデオ映像と組み合わせることで、ライブビデオトレーニングセッションに特有のストレスややりにくさを感じることなく、遠隔でのコーチングが可能となります。

以下の映像は、PUSH2.0を使用したキャメロンのトレーニングの例で、過去18ヶ月間のものです。

著者:ニック・ランドールは、10年以上の経験を持つストレングス&コンディショニング・コーチです。ニックは、フィットネスとゴルフを融合させ、Golf Fit Proを立ち上げました。現在、PGAツアープレーヤー、Division 1 colleges、ナショナルチームと契約し、独自のゴルフフィットネスサービスを提供しています。

 

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