【すぐできる! ジャンプによる疲労のモニタリング】
2024/03/19
スポーツ科学を用いた疲労の評価
【すぐできる! ジャンプによる疲労のモニタリング】
本日は垂直跳びを用いたパフォーマンス測定と疲労のモニタリングについてご紹介いたします。
スプリント測定、アジリティ測定、1RM テスト、跳躍テスト、反応テストなど様々なパフォーマンステストが行われていますが、中でも、広く普及しているのが垂直跳びのテストです。下肢の爆発的なパワー発揮能力の評価が手軽に実施できるのがその理由です。
しかし実は、垂直跳びは単純に下肢の爆発的なパワー発揮能力の評価だけではなく、優れた疲労のモニタリングテストでもあることをご存知でしたか?
トレーニングの負荷や頻度が高くなると疲労が蓄積します。疲労の蓄積はまず神経系に作用し、素早い爆発的な筋力の発揮能力に大きく影響します。それにより、パフォーマンスが低下し、怪我の発生率も高まります。それを未然に防ぐためは疲労のモニタリングが必要であり、モニタリングの結果に応じてトレーニング負荷をコントロールすることが必要となります。
そこで垂直跳びのパフォーマンステストを定期的に実施することが有効となるのです。
垂直跳び、CMJの計測は羽根形式のヤードスティック、加速度センサーのEnodeやOUTPUT、光学センサーのOptoJumpNextが活用できます。
http://sandcplanning.com/news/category/detail/?cd=26
下記の画像はある大学スキー選手の垂直飛びにおける跳躍高の推移です。おおよそ週2回ずつ、ウエイトトレーニングのアップ時に垂直飛跳びを3レップ行いました。しゃがみ込みの深さは任意として全力で跳躍するよう指示し、GymAwareを用いて毎レップの跳躍高をフィードバックしました。グラフの値は3レップの平均値です。
長期的に推移をみていくと、跳躍高が大きく変動していることがわかります。
これを見ていくことで、トレーニング目的に合ったパフォーマンス向上を狙えているのか、選手が疲労してしまっているのか判断することができます。
また、長期的な傾向を時系列的に見ていく以外にも、測定日の調子を観察することも有用です。グラフには3レップ中の標準偏差(バラつき)も表示しています。これをみることで、安定した跳躍を行えているのか、それとも大きく変動するのかが分かります。いくら跳躍高の平均値が高くても、標準偏差が大きければ安定して大きな力を出すことができていないことになります。ですから長期的にパフォーマンスをモニタリングする際にも、日々のパフォーマンスを正しく理解することが必要です。
意図的・計画的にトレーニング負荷を増大させていっている結果としてジャンプパフォーマンスが低下しているのなら問題はありませんが、無計画な ”追い込み“ や思い付きのトレーニング、限度を超えた長時間の練習などは無駄な疲労を蓄積してしまうだけで、大きなリスクを伴います。
これからの時期は中学・高校生や大学生は夏休みとなるため練習時間が大幅に増え、さらに激しい高温下でトレーニングすることが想定されるため、疲労のモニタリングには大きな役割があり、適切なトレーニングへと導くことができる優れた指標となります。
適切なコンディショニングで暑い夏を乗り切りましょう!
齋藤朋弥
エスアンドシー株式会社 営業・企画
JATI-ATI、スポーツパフォーマンス分析スペシャリスト
龍谷大学スキー部トレーニングコーチ
長谷川裕
龍谷大学スポーツサイエンスコース教授
スポーツパフォーマンス分析協会会長
日本トレーニング指導者協会名誉会長
エスアンドシー株式会社代表