野球選手のためのVBT

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野球選手のためのVBT

2020/07/07

齋藤朋弥・長谷川裕

野球選手のためのVBT

新型コロナウイルスからの自粛もあけて、プロ野球も開幕し、少しずつ今までの日常が戻りつつあります。高校野球や大学野球においても、多くのチームで活動が再開し、さまざまな工夫をしながら新たな目標に向けてトレーニングに取り組み始めています。今回は野球選手のパフォーマンス向上のために注目を集めているVBTについて、解説します。

 

◆野球選手のトレーニング指導にはなぜVBTが有効か?
野球選手のパフォーマンスを決定する要因である走能力、バッティングやピッチング能力、そして守備能力を向上させるために、さまざまなトレーニングが行われますが、こうした野球に必要な動作を高いレベルで実施するために不可欠とされている下肢や上肢の高い筋力と高いパワー発揮能力を効率よく向上させるために、ウエイトトレーニングは今や欠かすことのできないものとして導入されています。その場合、いつも同じ重量でトレーニングをするだけでは不十分で、様々な強度と量でトレーニングを実施しなければなりません。これには明確な目的意識とともに適切な強度と量の設定が必要不可欠です。それを助けてくれるのが、今回ご紹介するVelocity Based Training(VBT)というトレーニング方法です。
VBTは 、PUSH2.0やGymAwareのような速度計測デバイスを用いて、 ウエイトトレーニング中の動作速度(例えば、スクワットのボトムポジションから立ち上がるまでの速度)をリアルタイムでモニタリングしながらトレーニングを行う方法です。使用するデバイスによってはコーチがその場にいなくても遠隔でプログラムを送ったりトレーニングデータを確認したりできることから、メジャーリーグのチームにおいてもコロナの影響で全員集まってのトレーニングが難しい状況でリモートコーチングとして活用され、その効果が注目されています。


◆VBTにおける負荷の設定とモチベーション向上効果
このVBTが世界中で注目を集めるようになった最大の理由は、日々変化する選手のコンディションに応じた適切な負荷を選択でき、高いモチベーションを引き出せるという点です。従来、ウエイトトレーニングは、1RMに基づいた重量設定や選手・コーチの感覚によって反復回数や重量の増減を決定することが多く、必ずしも選手の個人差や日々のコンディションに合った負荷設定になっていない可能性がありました。
それに対し、VBTは、「1RMに対する相対的重量(%1RM)と挙上速度には安定した対応関係がある」という研究結果に基づいて、挙上速度をモニタリングするだけで、トレーニング目的に合った最適な負荷重量が設定できます。例えば、挙上速度が1.0m/sになる重量を選べば、誰でも、その日の体調に応じた1RMの50%でトレーニングすることが可能です。
また、挙上速度をモニタリングしながらトレーニングすることで、選手に明確な目的意識を持たせ、最大限の力発揮を引き出しやすいことから、高いトレーニング効果を得ることができます。この場合リアルタイムでモニタリングすることが非常に重要で、特に1レップ毎にフィードバックすることが最大のトレーニング効果をもたらすことがわかっています。このように、VBTによって、普段のトレーニングにおいて、適切な負荷設定や選手のモチベーションを効率よく引き出すことがいとも簡単にできるようになります。

 

◆最大筋力向上にも有効なVBT
野球のパフォーマンスは、絶対的な最大筋力の大きさそのものではなく、バッティングやピッチング等で発揮される高速かつ短時間に発揮される筋力、すなわちパワーに依存しています。しかし、最大筋力が低いまま高速の筋力発揮だけを行っていてもパワーを向上させることはできません。そこで、野球選手は最大筋力向上にフォーカスしたトレーニングにも定期的に取り組む必要があります。
VBTは、パワー向上にとっては有効であっても、最大筋力向上のためには有効とはいえないのではないかという疑問を持つ人もいますが、決してそうではなく、VBTによって、最大筋力を効率的に高めることが可能であることは、すでに研究によって明らかにされています。どんなに重いウェイトであっても常に最大速度を意識して挙上するため、特に爆発的にミリセカンド(msec)の短時間で発揮する筋力の最大値を向上させるために、VBTは有効であると言えます。
野球選手はウェイトトレーニングが仕事ではなく、ウェイトトレーニングはあくまで野球のパフォーマンス向上のための手段としての位置づけです。ですから、それによって技術練習やチーム練習に影響する疲労や全体として生じるかもしれないオーバートレーニングは極力避けなければなりません。その意味では、最大筋力を向上させるトレーニングにおいても可能な限り無駄を省いて最大限の効果をあげるためのトレーニング戦略を追求する必要があるのです。VBTはそのための最適な方法であることが多くの指導者と選手によって確かめられています。

 

◆最大筋力を高めるためトレーニング法
VBTで高い筋力の獲得を目指す場合、目標とする挙上速度は0.5m/s以下の速度に設定します。つまり全力でいくら速く挙上しようとしても、0.5m/s以上のスピードが出せないような重量を探します。例えば0.40~0.50m/sになる重量を見つけます。すると、その日の体調に応じた80%1RM以上の負荷になります。
例えば0.40~0.5m/s付近となるウェイトセットして1レップ目から全力で挙上すると、5~8レップできます。0.3~0.4m/s付近のウェイトで反復すると、3~4レップになります。これを3~4セット行います。
VBTが凄いのはこの後です。こうして適切な重量を選んでトレーニングをするのですが、この重量はその日の体調によって、あるいはセットが進むにつれて常に同じスピードが出せるとは限りません。調子のいい日は速くなり、0.5m/sを超えるスピードが出る可能性があります。逆に調子の悪い日は設定した最も遅いスピード例えば0.4/sが出せないかもしれません。そういう時に負荷重量を微調整するのです。つまり、設定した速度よりも速い速度で挙上できた場合は負荷を増やし、逆に遅くなってしまった場合は負荷を減らします。
速度を目標とすることで、このような重量の自動調整を選手自身が行えることもVBTのメリットであり、個々の選手一人一人に見合った適切な重量選択に繋がります。これにより、選手が重たすぎる危険な負荷でトレーニングすることを防いだり、トレーニング刺激に不十分な負荷を選択してしまうことを防ぐことができます。
注意点として、このような高重量では特にフォームが乱れやすく、可動域が狭くなる可能性があるため、腰をあおったり、背中が無理に丸まったりしないように最大限の可動域で適切なフォームでトレーニングすることは必須です。また、ウエイトトレーニング初心者がいきなり高重量を持つことはケガに繋がる可能性があるため、フォームが安定してから行うことをお勧めいたします。

 

◆パワー向上のためのVBT
パワーを向上させるためのトレーニングにとって望ましい負荷は、一般的にパワーの最大値が出現する50~60%1RMとされてきましたが、上述した%1RMと挙上速度の対応関係に関する研究によると、この重量に対応する挙上速度は0.8~1.0m/s付近になります。ですから、この速度に見合った重量でトレーニングすることでパワーの最大化を促進するための適切な負荷重力を合理的に見つけることができます。

トレーニング例としては、3レップを8セット行う方法があります。最大努力での爆発的な挙上を全力で3レップ行い、30〜45秒程度の休息を入れ反復します。休息をこまめに挟むことで毎セット、筋肉がフレッシュな状態で最大限のパワーを発揮し続けることができます。
パワー向上のためのトレーニングでは、疲労によってパワーが低下した状態で反復を継続することは全く無駄なばかりか、逆効果にさえなります。
野球のプレイは常にフレッシュな状態で大きなパワーを爆発的に発揮します。この能力を高めるためのトレーニングを疲労した状態で追い込むことにはエネルギー系に対する刺激として何の意味もないばかりか、その選手が持っている速筋線維(TypeIIモーターユニット)の遅筋化を招く危険性も研究によって指摘されています。
ですから、セット内で一番良かった挙上速度から、例えば10%以上速度が低下した時点でそのセットを終了させるという方法を採用することができます。この方法は、例えば10レップ行う予定で、1レップ目が9.9m/s、次の2レップ目に1.0m/sが出た後、0.98、0.95、0.92と低下していき、その後0.89が出た時点で最高速度である1.0m/sの10%である0.90m/sを下回ったことになりますから、直ちにそのセットを終了します。
特に、試合シーズン中でウエイトトレーニングによる疲労を蓄積したくはないけれどもパワーを低下させないようにトレーニングしたい、というような時には、この速度閾値を5%まで狭めることで、短いトレーニング時間で不要な疲労を招くことなく、強度の高い最適な刺激だけを神経-筋システムに掛けることができます。

 

◆野球競技のパフォーマンスに繋がるウエイトトレーニングを行う
繰り返しますが、野球選手にとってのウエイトトレーニングの目的は、パワーリフティングやオリンピックリフティングの選手になることではなく、野球というスポーツにおけるパフォーマンス向上のための補助手段として行われます。なぜ、バーベルやダンベルという重たいウェイトを持ち挙げるかというと、それによって体重だけのトレーニングや無負荷のトレーニング以上に高い床反力を得ることや高い負荷を筋活動に掛けることができ、それによってより多くの神経-筋単位なかでもタイプIIモータユニットを動員して動作を行うためです。それによって、スプリントスピードや切替しの素早さ、スイング速度、ピッチング速度など野球競技のパフォーマンス向上につながる筋力とパワーを効率よく最大限に発達させることが目的です。
ですから、パフォーマンス向上につながらないトレーニングになったり、無駄な疲労を招くようなトレーニングは避けなければなりません。特に大学野球や高校野球は3~4年間という短い期間で選手のパフォーマンスを向上させなければいけません。そのためには、野球競技のトレーニングに多くの時間を割くべきであり、その他のトレーニングはできるだけ効率よく行うべきです。VBTを行えば、ウエイトトレーニングにおいて、過不足なく適切なトレーニング負荷を掛けることができ、なおかつ選手の高いモチベーション引き出し、しかも疲労をコントロールすることもできるのです。
また、部員が多いチームにおいて、コーチや監督がすべての選手1人1人に対して常に丁寧な対応をするのが難しい状況で、PUSH2.0のようなデバイスはいわばアシスタントコーチとして、選手のサポートを行ってくれます。

 

齋藤朋弥
エスアンドシー株式会社 営業・企画
JATI-ATI、スポーツパフォーマンス分析スペシャリスト、NSCA-CSCS
龍谷大学スキー部トレーニングコーチ

 

長谷川裕
龍谷大学スポーツサイエンスコース教授
スポーツパフォーマンス分析協会会長
日本トレーニング指導者協会名誉会長
エスアンドシー株式会社代表

 

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