ランニングにおける最適なピッチ数とその見つけ方

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ランニングにおける最適なピッチ数とその見つけ方

2020/09/07

齋藤 朋弥・長谷川 裕

最適なピッチ数とは?
ランニングは今や競技選手だけではなく、市民ランナー、健康志向の方々まで多くの人々に愛されています。
ランニングを始めた人は誰しも、より速くより長い距離を、できればより楽に走れるようになりたいものです。
今回は、より速く、より長くかつ楽に走れるようになるためのトレーニングで考慮すべきピッチというものについて考えてみたいと思います。
ランニングにおける走行速度はピッチ数×ストライドで決まります。ストライドは歩幅であり、ピッチは一分間当たりの歩数のことを言います。このうちピッチに関しては一般的に180歩/分という数値が目安とされています。1分間に180歩の頻度で走っているということです。トップ選手ではそれを大きく超え、レースでは200歩/分以上のピッチで走る選手も 多くいます。市民ランナーやランニング初心者では140~170歩/分ほどの数値になることが多いかもしれません。 180歩/分というピッチは、初めて意識して走り出すとかなり速く感じられます。アプリなどでメトロノームの音を聞きながら走ったり、 その場で腕振りをしてみたりするとわかりやすいかと思います。

 

180歩/分の根拠は?
180歩/分というのはどこから来たのでしょうか? この数値はおそらくJack Daniels氏により広まったものです。彼は一流の指導者であるとともに、運動生理学者でもありました。彼が1984年のロサンゼルスオリンピックにおいて中長距離選手を対象にピッチ数の分析を行ったところ、180 歩/分 を超える選手がほとんどで短い距離になればなるほどそのピッチ数は速くなり800mなどでは200歩/分を超える選手も多数いたそうです。しかし、3000mからフルマラソンまでの長距離種目においては、ストライドは変わるものの、ピッチ数はほとんど変わらず一定のペースで走っていることを発見しました。その後もいくつかのオリンピック金メダリストを対象にピッチ数の分析を行い、同様の結果がみられたことを報告しています。

 

最適なピッチ数でないとより多くのエネルギーを消費してしまう。
しかし、この最適といわれる180 歩/分というピッチ数ですが、当然競技レベルや選手の身長、 走行速度等によって個人差があります。では最適なピッチ数を調べるにはどうしたらよいのでしょうか?同じスピーで走っている時、ピッチ数を高めるとストライドが小さくなります。逆にストライドを伸ばそうとするとピッチ数は減ります。そのどちらがより効率よく走れるか、言い換えればより少ないエネルギーで同じスピードを出せるのか、という問題になります。
いくつかの先行研究で、ピッチ数と酸素摂取量や心拍数の関係が調べられた結果、ピッチ数と酸素摂取量や心拍数との間にはU字型の関係性がみられることが明らかになっています。簡単に言うと、同じスピードで走るのであれば、最適なピッチ数よりもピッチ数が低ければ低いほど、あるいは高ければ高いほどエネルギーを多く消費してしまうということです 。このエネルギーのロスの原因は下半身の弾性エネルギーが関係しているのではないかといわれています。ピッチ数が低いと走行速度を高めるためにオーバーストライドになることにより大きな筋力を使ってしまうことや、着地から蹴りだしまでの弾性エネルギーの使用効率が悪くなること、着地時の衝撃に対する筋疲労などにより多くのエネルギーが消費されると考えられています。

 

経験を積んだランナーでは生理学的に最適ピッチ数と任意のピッチ数がほぼ同じ
Iain Hunterらは、経験を積んだランナーを対象に酸素摂取量とピッチ数の関係を調べました。走行速度を各ランナーの最大酸素摂取量の77%(10.8~16.6㎞/hに相当)に固定して、各自の好きなピッチ数とそれに対する-8%、-4%、+4%、+8%のピッチ数の走行を測定し、それぞれのピッチ数で走っている時の酸素摂取量をもとに最適なピッチ数を探しました。その結果、酸素摂取量から決定された最適なピッチ数とランナー自身が好きなピッチ数はほとんど同じ値を示しました(平均174歩/分)。kのことから、経験を積んだランナーは普段のトレーニングやレースから自然と最適なピッチ数を見つけ出してトレーニングを行っていることが考えられます。
 

 

グラフ1.酸素消費量とピッチ数の関係(PSF:好きなピッチ数、OSF:酸素消費量とピッチ数から計算された推定最適ピッチ数)
HUNTER, Iain; SMITH, Gerald A. Preferred and optimal stride frequency, stiffness and economy: changes with fatigue during a 1-h high-intensity run. European journal of applied physiology, 2007, 100.6: 653-661. Fig.1引用 


初心者の生理学的最適ピッチ数と任意ピッチ数
Ben T. van Oeverenらは、比較的ランニング歴の浅い選手を対象として、3つの走行速度について、それぞれ5段階のピッチで走ってもらい、ピッチ数と心拍数の関係を調べました。速度は、自己選択速度とその90%および110%で、ピッチ数は、自己選択ピッチ、140、160、180、200 歩/分 の5段階でした。その結果、他の研究と同様に、心拍数とピッチ数の間にはやはりU字型の関係性がみられましたが、心拍数から計算された最適ピッチ数(166 歩/分 )の方が、自己選択したピッチ数よりも高い値を示しました。
このことから、経験の浅いランナーは、自分で最適と感じるピッチよりもやや速い最適ピッチ数で走ることによって、エネルギーの消費を抑えながら走ることができる可能性があると言えます。
この研究の著者は166歩/分という最適なピッチ数について個人差がみられたことから、この値は必ずしもすべてのランナーに向けて推奨できるものではなく、あくまで個別で最適なピッチ数を見つけるべきであると述べています。
ここに、最適なピッチ数には個人差があるということが重要なポイントがあります。

 

バイオフィードバックを用いて、最適なピッチ数を実現する
長距離競技ではレースだけに限らず練習でも何千~何万歩に及ぶトレーニングを行います。 普段から最適なピッチ数を意識してトレーニングを行い、 最適なペースでレースを進めることがより良い結果に結びつくと考えられます。ピッチ数は、 最近では腕時計でもリアルタイムで見ることができ、 走行中に確認しながらトレーニングをすることもできます。
これらの機能は、GPSを基にした距離の測定と腕時計に内蔵された加速度計の振動からピッチとストライドを割り出して表示するものですが、実際の1ステップごとの実測値からピッチとストライドをリアルタイムで計測し表示する装置もあります。
弊社が取り扱うOpto Jump NextやOptoGait内蔵のh/p/cosmosトレッドミルでは1000分の1秒単位1㎝の精度でリアルタイムでピッチやストライドなどを確認できます 。実はこうしたトレッドミルを用いなくても、1mのOptoJumpNextのを通常のトレッドミルに設置し、トレッドミルの前にモニターを置くことで画面に表示されるピッチ数やストライドを見ながら、ランニングのための理想的な姿勢を保ちながら目標のピッチ数に合わせて走ることができます。こうしたトレーニング法は、バイオフィードバック法と呼ばれ、内的な感覚ではわかりづらい動作や感覚などを機械を通して具体的な数値や音などで客観的なデータとして表し、それを基に繰り返し反復して学習し、 自己制御を行う方法です。 
マラソンなど競技動作の再現性が高いといわれる競技では、 よりよいフォームでより速いペースで走れるように何度も繰り返し反復してトレーニン グすることが必要です。OptoJumpNextはほとんどのトレッドミルで設置が可能です。トレッドミルであれば、何百歩、何千歩と測定するだけでなく、トレーニングとしてピッチ数やストライドの改善に使用できます。ジムやフィットネスクラブリハビリテーション施設など、是非導入をご検討ください。

トレッドミル上でのOptoJumpNext使用例:リアルタイムで左右差がわかります!

リアルタイムフィードバックを用いたトレーニング例

齋藤朋弥 t.saito@sandcplanning.com
エスアンドシー株式会社 営業・企画
日本トレーニング指導者協会 JATI-ATI

スポーツパフォーマンス分析スペシャリスト

NSCA-CSCS

龍谷大学スキー部トレーニングコーチ

 

長谷川裕
龍谷大学スポーツサイエンスコース教授
スポーツパフォーマンス分析協会会長
日本トレーニング指導者協会名誉会長
エスアンドシー株式会社代表

 

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今回はランニングで重要な指標となるピッチについてお伝えしまし た!
リアルタイムランニング分析デバイス:Opto jump Next

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参考文献
・Iain Hunter Æ Gerald A. Smith,Preferred and optimal stride frequency, stiffness and economy:changes with fatigue during a 1-h high-intensity run,European Journal of Applied Physiology · September 2007
・Ben T. van Oeveren, Cornelis J. de Ruiter*, Peter J. Beek, Jaap H. van DieeÈn,Optimal stride frequencies in running at different speeds,PLoS ONE 12(10):e0184273.