#12 自動タイム計測装置の効果的活用法

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トレーニング指導者のためのパフォーマンス測定と評価#12 自動タイム計測機器の価値2

2023/08/07

自動タイム計測装置の効果的活用法

トレーニング指導者のためのパフォーマンス測定と評価#12自動タイム計測機器の価値2

※上記記事はJATI EXPRESS No.95に掲載のものです。

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【概要】

・走り方や意識するポイント

・方向転換走のタイム計測

・スタートダッシュとトップスピードの比較

・バック走やサイドステップの指導に

・ベースランニングへの応用

・体重を測るようにタイム計測を

[子どもたちや選手の本気に向き合い、モチベーションに答えることのできるトレーニング指導の可能性を大きく広げるために不可欠のツールである]

自動タイム計測装置は、効率のよい客観的で正確なタイム計測ができるからこそ可能となる効果的なトレーニングを可能にする。今回は、そうしたトレーニングのために、この自動タイム計測装置をより効果的に使ういくつかの方法について紹介したい

 

はじめに 

 かれこれ20年近く前、あるJリーグクラブのユースチームに対して、私が、ストップウォッチではなく、光電センサーを用いた自動タイム計測によるスプリントタイムの計測を提案したところ、当時の外国人監督から、「そんなことをしても誰が速いか遅いかがわかるだけだから、必要ない」と断られました。本当にそうでしょうか? もしそうなら、高いお金を出して自動タイム計測装置を買う必要はありません。 

 しかし、なぜ今日、小中学生からトッププロのレベルまで、世界中のスポーツパフォーマンス向上のためのトレーニングにおいて、自動タイム計測装置の利用が当たり前になりつつあるのでしょうか。そこには、前回紹介したような、自動タイム計測装置によって、手動のストップウォッチの持つ問題点を克服できるということだけではなく、効率のよい客観的で正確なタイム計測ができるからこそ可能となる効果的なトレーニングを行うことができるからです。逆にいえば、ストップウォッチだけでは行うことのできない、できたとしてもどこまで客観的に信頼性があるかわからないトレーニングを、自動タイム計測装置であれば確実に実行することができるからです。 

 今回は、そうしたトレーニングのために自動タイム計測装置を効果的に使ういくつかの方法について紹介したと思います。3台以上のゲートを用いてラップタイムを測ったり、反応時間を絡めてスプリントやアジリティーの測定をしたりすることについては機を改めるとして、今回は2つのゲートだけで行える内容に絞ることにします。

 

1.前回のおさらい 

 最初に前回のポイントを整理すると:

●ストップウォッチによるタイム計測は、動作を目で見てボタンを押すというヒトの反応時間と予測(そして心理的バイアス)によって、光電センサーによる客観的な自動タイム計測よりも有意に速い記録が出る。したがって、現実のスポーツパフォーマンスを決定づけている客観的なタイム差を反映できない。このことは、パフォーマンス能力の正確な診断や、記録向上のパフォーマンスに及ぼす意味などを判断するための根拠としては使えない、ということを意味する。

 

●ストップウォッチによるタイム計測は、測る人によって記録がまちまちとなる。誰が測るかによって結果が変わるので、客観性と信頼性を保証できない。

 

●ストップウォッチによるタイム計測は、ヒトの反応時間が集中力や体調によって異なることから、同じ測定者の中でも記録が変動する。

 

●ストップウォッチによるタイム計測では、正確に測ろうとする意識や注意を、タイム計測行為それ自体に向ける必要があるため、それ以外の選手の動作や運動の細部を正しく観察するという指導者が本来しなければならないことがおろそかになる。

 

2.走り方や意識するポイント 

 あなたが指導している子どもたちや選手が、あまりにも効率の悪い姿勢やテクニックで走っていて、それを修正すれば確実に速くなる可能性がある、という場合、その修正のためには、指導されたポイントを意識して走らせる必要があります。が、単に目で見てその動作が良くなったとか、まだ修正が必要だと指導者が判断するだけではなく、それによって、実際に何らかのタイムの変化が生まれれば、子どもたちや選手はさらにその努力を続けようという意欲が高まります。

 また、指導者にとっても、その修正ポイントが効いているかどうかどうかを判断することができます。もちろん、すぐにその指導や意識がタイムに反映するとは限りませんが、極端に効率の悪い走り方をしている場合は、指導の焦点が、タイム改善につながる要因にうまく合えば、意外とすんなりとタイムが改善されます。 

 スタート動作からフィニッシュまで、5mや10mといった短い距離のなかで、意識するポイントはいくつかありますが、そのどこにどんな意識を持って動作するか、を試行錯誤しながら、すぐに客観的で正確なタイムがフィードバックされれば、少なくとも間違った、さらに効率の悪い走り方に変容していくことはないはずです。修正点を意識する・しない、意識したポイントがコントロールできている・できていないといった繰り返しの中で、刻々と変化するタイムと向き合う中で、徐々に効率の良い姿勢やフォームやテクニックが安定していくにつれて、タイムも安定的に改善されていきます。

 

3.方向転換走のタイム計測 

 多くのスポーツでは、陸上競技のように一方通行ではなく、往復や方向転換を伴う移動のスピードが求められます。本来のアジリティーという言葉には「反応時間」を含みますが、ここでは、反応時間を除いた方向転換(Change of Direction: COD)について、自動タイム計測機器を活用する利点を説明します。 スタートのゲートを通過してからタイム計測を開始し、指定したラインを踏んだり跨いだり、あるいはマーカーやコーンをタッチして元のゲートに戻る、さらには、ポールやコーンを回って戻るといったCODのテストでは、ゲートは1つあれば事足ります(図1)。スタートとゴールが異なる位置になるセッティングでは、2つのゲートを設置します(図2)。 

 こうした方向転換では、スタート、加速、減速、ターンまたはタッチの動作、再スタート、加速、フィニッシュといった局面を区別することができ、このうちどこかの局面が改善されれば、トータルなタイムが改善されます。スタートの後、減速し方向転換するということを前提として走ると、ターンする地点まで思い切って突っ込めないということが起こります。 

 これはブレーキ性能の悪い自転車では思い切って加速できないのと同じです。突っ込み過ぎると減速に時間がかかり、ターンやタッチでバランスを崩し余計に時間を食うということになります。したがってそのトレードオフで適当なスピードに落ち着くのですが、減速のための姿勢やステップを工夫することで、以前より速い速度で突っ込んでいっても減速に時間がかからなくなります。 

 また、ターンやタッチ後の再スタートは、最初の静止状態からの十分な準備姿勢をとってのスタートと異なります。ですから再スタート時の姿勢やステップの仕方もその後の加速に影響します。これらのどのポイントにどんな意識をさせるか、どんな姿勢やステップをするかというポイントを絞った指導で、方向転換のタイムを確実に改善させることができます。もちろん、筋力が向上することで、こうした加速・減速の能力が改善されると方向転換のタイムは短縮していきます。

 

4.スタートダッシュとトップスピードの比較 

 静止状態から短い距離(例えば5~10m)をいかに速く走れるかという能力と、一定の距離にまで加速していった後、どれだけのトップスピードにまで到達できるかという能力は同じではありません。出だしが速くてもトップスピードが遅い選手もいれば、その逆の選手もいます。これらの違いは行っているスポーツやポジションによってその重要性が異なり、トレーニングでどちらを向上させるべきか、という目標設定やトレーニング成果の評価にも影響します。 

 自動タイム計測装置でこれらの能力を測定する場合には、静止状態からスタートして10m走るタイムと、一定の距離(例えば20m)を加速した後の10mを通過するタイムを比較することで、こうした能力を分析することができます。Wittyでは、タイムの他に時速を表示させることもできますから、こうした結果から図3のようなグラフを簡単に作成することができます。それによって、個人ごとの強化目標やトレーニング成果の評価にもより具体的で意味のある考察ができます。
 

5.バック走やサイドステップの指導に 

 自動タイム計測装置は、普通にスプリントする、ということだけではなく、さまざまな移動の正確な計測ができますから、スポーツやポジションに特異的な移動運動、例えば背面走やサイドステップといった運動の評価にも効果を発揮します。 

 特にこうした運動の指導では、方向転換走と同様に、ただまっすぐ走るということよりも、指導者が選手の姿勢やステップ等を詳しく観察し、より合理的な動作を指導する必要がありますから、自動タイム計測装置を用いることでより適切な指導が可能となります。方向転換と組み合わせることにより、例えばテニスやバドミントンのようなスポーツでは、実際のゲームにおける移動やステップワークをシュミレーションしたトレーニングや測定に効果を発揮します。

 

6.ベースランニングへの応用 

 野球のベースランニングに自動タイム計測装置を効果的に使用している指導者もおられます。ベースを回るときのふくらみや走路、ベースを踏むためのステップ調整の仕方などを一律に固定してすべての選手にそれを守らせるというよりも、どうすればタイム短縮できるかを選手に考えさせ、工夫させることで、理想的な回り方を見つけることがより効果的だという考え方からです。 

 これは、スライディングにも当てはまり、その場合は、光電センサーをベースの端の高さギリギリに設定することで、足がベースに触れたかどうかでタイムを切ることができるため、厳密なタイムを測定することができます。

 

7.体重を測るようにタイム計測を 

 以前テレビで「計るだけダイエット」というダイエット法が放映され、話題となりました。朝晩2回、体重を計るだけで自然にダイエットが成功するというものですが、「自己評価管理法」という生活習慣病の治療法が元になったもので、毎日自分の体重を計り、増減の変化をグラフにつけるという作業を繰り返すうちに、何が原因で太ったのかに気付き、自然と肥満の原因となる食生活や生活習慣を見直し改善できるようになるというものです。これを成功させるためには50gの精度で測定できる体重計が必要だとされていました。 

 この方法は、スプリントや方向転換能力の向上にも応用することができます。誰でも簡単に、いつでも客観的で正確に1/100秒まで測定できる装置を常日頃から使えると、日々、コンディションがさまざまなに変化する中で、決められた距離のタイム計測を繰り返すことにより、個人ごとの工夫やトレーニングを経て、少しずつタイムが変化していきます。それ自体がモチベーションアップにつながり、また体調を維持することにもつながります。 W

 ittyのようなタイム計測装置には、選手が自分の背番号を入力して走るだけで自動的にそのタイムが個人ごとに保存され、後からWittyマネージャーという管理ソフトにそのデータをアップロードし、エクセルにエクスポートしていけば、簡単に記録の変遷をグラフ化することができます。まさに、体重を測るように各自のタイムの変化に向き合うことになり、その結果「自己組織化的」なスプリントや方向転換能力の向上が望めるのです。

まとめ 

 このように、光電センサーを用いた自動タイム計測装置は、ただ単にタイムを正確に測れるというだけにとどまるものではなく、子どもたちや選手の本気に向き合い、モチベーションに答えることのできるトレーニング指導の可能性を大きく広げるために不可欠のツールであるといえます。 

 まだストップウォッチによるタイム計測だけに頼っている方は、ぜひこの機会に自動タイム計測装置の導入を検討されてはいかがでしょうか。そしてすでに導入しているという方は、単なる定期的な測定にとどまらず、日常的にさまざまな場面でさらに有効活用する工夫をしていただけばと思います。

 

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